宅建の本試験において、重要科目と言えるのが民法です。宅建本試験において民法などは、50問中14問程度、毎年出題されます。
民法は条文数が1000条を超える非常に広範な分野となりますが、その中でも毎年出題されており、最重要分野と言えるのが相続・遺言の範囲です。
相続・遺言は覚えてしまえば非常に単純であり、また宅建実務においても相続という分野は現在のトレンドとも言えますので、必ず知識を習得して得点源にしておいていただきたい分野です。
今回は、宅建本試験における相続について、どのような問題が出題されるのか、その難易度、そして、解法のポイント、相続分の計算以外の遺言についても説明させていただきます。
相続ってどんな問題が出題される?出題数や難易度も教えて!
では、相続についてどのような問題が出題されるのか、具体的に見てみましょう。
平成26年 問10
Aの両親は既に死亡しており、Aには内縁の妻Eがいるが子はいない。Cには子F及び子Gが、Dには子Hがいる。Aが平成26年8月1日に遺言を残さずに死亡した場合の相続財産の法定相続分として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
宅建本試験の相続問題については、平成26年出題のような法定相続分の計算について問われることがほとんどです。
それに加え、遺言や遺留分について問われた年度もあります。
相続問題については毎年最低1問は出題され、多い時にでもせいぜい2問出題されたことがある程度です。
相続分の計算はポイントを押さえて慣れていけば簡単に得点することができるので、難易度としては容易な分野とえいます。是非とも得点源にしていただきたいと思います。
相続の計算問題を解く際のポイントは?
では、上記平成26年の過去問をもとに実際に相続の計算問題の解法についてそのポイントを教示していきたいと思います。
ポイント:誰が相続するのか、その後どれだけ相続するのか
まず、民法の相続人についてきちんと整理して頭に入れておきましょう。
法定相続人について民法は以下のように定めています。
配偶者・・・常に相続人になる(民法890条)
子(直系卑属 孫、ひ孫など)・・・第1順位(民法887条)
直系尊属(両親、祖父母など)・・・第2順位(民法889条)
兄弟姉妹・・・第3順位(民法889条)
ここで、平成26年度の過去問をもう一度確認してみましょう。
Aの両親は既に死亡しており、Aには内縁の妻Eがいるが子はいない。Cには子F及び子Gが、Dには子Hがいる。Aが平成26年8月1日に遺言を残さずに死亡した場合の相続財産の法定相続分として、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
まず、配偶者の記載ですが、内縁の妻Eがいるというだけで、法律上の婚姻関係にあるものについては記載はありません。
ここで、内縁の妻については条文上記載がないため、相続人にならないことになります。
また、子がいないという記載のため、第1順位の相続人がいないため、第2順位の直系尊属(父母、祖父母)に相続分が移動します。
Aの両親は既に死亡しているという記載があり、また祖父母については死亡の事実について記載はありませんが、ここでは当然死亡しているものと考えて結構です。
第2順位の直系尊属も死亡しているので、兄弟姉妹であるB、C、Dが相続人となりますが、C及びDについては、A死亡前に既に死亡しているので、その子である、F、G及びHがCとDの代わりに相続人となります(「代襲相続」と言います)。
よって相続人は父のみを同じくする兄BとCの子であるF及びG、及びDの子Hとなります。
法定相続分を押さえる
上記のように誰が相続人であるかを確定することができたら、次に実際の相続分について確定していきます。
民法900条では相続分について以下のように定められています。
①相続人が配偶者と子の場合⇒配偶者2分の1、子2分の1
②相続人が配偶者と直系尊属の場合⇒配偶者3分の2、直系尊属3分の1
③相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合⇒配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1
となり、また、相続人が複数の場合、相続分を按分することになります。
例外として父母の片方を同じくするいわゆる、半血兄妹の場合は法定相続分は父母を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります。
では、上記平成26年の過去問を例に挙げて実際の法定相続分を計算してみましょう。
結論として相続人は「父のみを同じくする兄Bと弟Cの子であるF及びG、及び弟Dの子H」となりました。
配偶者はいないので、B、F、G、Hの4人で分けることになりますが、問題となるのはその割合についてです。まず、代襲相続をしているF、G及びHについては、CとDの相続分をそのまま受け継ぐと考えますのでB、C、Dの相続分をまず確定させます。
Bは父のみを同じくするだけ(判決兄妹)なので、CとDの相続分の半分になりますのでB:C:D=1:2:2という分け方になります。
ですので、Bが5分の1、Cが5分の2、Dが5分の2の相続分を取得することになります。
次に実際の相続人であるCの子F、G及びDの子HについてはC、Dの持分をそれぞれ引き継ぐことになりますので、FとGはCの持分5分の2を按分してそれぞれ5分の1ずつ、
HはほかにDの相続人がいないためDの持分5分の2をそのまま引き継ぐことになります。
よって、最終的な結論としては以下のようになります。
B・・・5分の1 F・・・5分の1 G・・・5分の1 H・・・5分の2
平成26年の過去問は問題自体が非常に長く複雑であり、分析が必要になるため、本文を読まれた初学者の方々は戸惑ってしまう可能性がありますが、相続分の計算の問題については上記のとおりの順序をもって解くことが基本となります。
基本さえ押さえればあとはその順番を守って解いていくだけなので、どれほど問題の文字数が多くても焦らず、戸惑わずに冷静に分析することで容易に得点することができます。
遺言や遺留分など|相続の計算以外に出題される分野はある??
相続分の計算が概ね毎年10問出題されることは上述しましたが、相続分野でもう1問出題される場合、よく出てくるのが遺言や遺留分についてです。
遺言や遺留分についての説明はここでは割愛させていただきますが、過去問でどのような問題が出題されたかを説明したいと思います。
平成17年 問12
2.「自筆証書による遺言書を保管している者が、相続の開始後、これを家庭裁判所に提出してその検認を経ることを怠り、そのままその遺言が執行された場合、その遺言書の効力は失われる。」
3.「適法な遺言をした者が、その後更に適法な遺言をした場合、前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は、後の遺言により取り消したものとみなされる。」
4.「法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合、Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合、Bは遺留分権利者とならない。」
肢の1~3については遺言について、肢4については遺留分についての知識問題となっています。
過去問の解説についても割愛させていただきますが、基本的に宅建の試験においては知識問題、条文問題ばかりです。
知っていれば解ける、知らなければ解けない問題ばかりですので、対策としては重要条文の読み込み及び、過去問の反復による知識の定着が必須となります。
今後についても基本的に相続分野について出題されますので、遺留分についてはその計算方法や期限などの要件についても抑えておくことが必要です。
遺言については自筆証書遺言と公正証書遺言の作成の要件をきちんと整理しておくこと、また、自筆証書の検認手続についてもきちんと押さえておきましょう。
相続全般としては放棄や承認についても押さえておくことが必須です。
まとめ
今回は宅建試験の民法の科目の中でも相続対策について言及させていただきました。
基本的に宅建本試験は知識問題ばかりですので、知っていれば簡単に解くことができますが、知らなければ当然のことながら解くことはできません。
どれだけ、正確な知識を習得しているかが合否の分かれ目となるので、過去問の学習で正確な知識を習得しましょう。