宅建の合格を目指そうとして学習をし始めた皆様が最初に学習するのが、権利関係の分野です。
ここで、「宅建て難しい」と思ってしまい、つまずいてしまうと、今後も苦手意識が定着してしまい、挽回するのは困難になってしまいます。
実は、宅建の権利関係の問題は、ほかの資格試験と比べて素直な問題ばかりです。
最初につまずいてしまわないように、今回は宅建本試験の権利関係について、問題を攻略するコツや勉強法についてお話しさせていただきます。
権利関係って何?
宅建試験は、みなさん御存じのように
という4つの科目で構成されていますが、そのうちの権利関係分野とはどのような問題が出題されるのかを解説します。
権利関係で出題される法律は、主に民法です。権利関係=民法と考えて頂いても結構です。
ただ、例年、民法以外にも、
が出題されます。
借地借家法は、民法の賃貸借の特別法ですが、非常に重要な法律です。不動産取引においては、売買の他、賃貸借も非常に重要な業務ですので、重要度は推し量れるかと思います。
借地借家法は民法の賃貸借に含まれるくらいの感じの分野で、現実にも、民法の賃貸借と借地借家法の内容が1問の中で出題されることも多々あります。
区分所有法はいわゆる分譲マンションなどについての法律です。また、不動産登記法は不動産の民法上の対抗要件である、登記について整備した法律です。
したがって、大まかにいいますと、
というのが権利関係分野の平均的な出題分野であるといえます。
過去に出題された分野
近年の宅建試験は権利関係について難易度があがっていると言われています。
ですので、過去10年で出題されている頻出分野について、きちんと押さえておくことが重要になります。
過去10年で5回以上出題されている分野は以下の通りです。
・制限行為能力
・代理(特に「無権代理」「表見代理」「復代理」「自己契約・双方代理」)
・時効
・物権変動
・不動産登記法
・共有
・建物区分所有法(特に「規約」「集会」「管理者」)
・債務不履行
・売主の担保責任(特に「抵当権付き」「瑕疵担保責任」)
・不法行為(特に「一般不法行為」「使用者責任」)
・保証債務・連帯債務
・抵当権(特に「物上代位」「法定地上権」「消滅請求」「第三者効力」)
・相続
・賃貸借契約(民法と借地借家法の両方から出題)
今後出題が予想される分野
また、民法の総則分野についても例年出題されていますので、今後も出題される可能性が高いと言えます。
さらに、近年は判例からの出題も多いので、重要判例についてはしっかりと押さえておく必要があります。
出題数
宅建本試験のうち、権利関係分野については例年どれくらい出題されるのでしょうか。
権利関係分野は毎年、
から1問、と計14問出題されています。
宅建の全問題数のうち何題出題されるか
宅建試験は出題数が全部で50問ですので、
宅建業法の出題数20問に次いで2番目に多く出題されます。
難易度
宅建本試験の難易度が上がっていると言われている昨今では、権利関係分野の正答率は、実は、そこまで高くありません。
合格者でも、14問中7問程度しか正解できていません。
難易度で言いますと、宅建本試験の中では難しい分野であると言えるかもしれません。
反対に言いますと、合格者ですら5割程度の正答率であるならば、むやみに満点を目指さずとも合格が可能であると言えます。
権利関係をマスターするためにすべき勉強方法は?!
それでは、権利関係分野をマスターするためには、どのような学習方法が効果的なのでしょうか。
効率的に学習するためのポイントについて解説させていただきます。
頻出分野に絞って学習する
第一に、権利関係分野で言いますと、民法だけでも、条文数は1000をこえるほど、範囲はとても広いということが特徴的です。
ですので、思い切って頻出分野に絞って学習するべきだと筆者は主張します。
先ほども申し上げましたが、合格者ですら5割程度の正答率でしかないので、逆説的に言いますと、権利関係分野では7割とれたら十分、だと割り切って学習した方が効率的です。
そう考えると、3割については捨てることができます。過去問を中心として、上記の頻出分野を重点的に学習することで、知識を定着することが合格への早道であると言えます。
また、毎年5~6問は宅建受験用のテキストにも記載されていないような部分からも出題されています。そうであるならば、その部分は割り切って捨ててしまい、残りで点数を稼ぐようにシフトした方が精神的にも楽に問題を解くことができます。
原則と例外を意識して勉強する
次に、権利関係分野で実際にテキストを読む、あるいは、過去問を解いて学習していく際の心構えについてお話しさせていただきます。
学習する際に、心にとどめておいてほしいことは、
ということです。
例えば、債権分野の連帯債務や連帯保証についても、他の債務者や連帯保証人には効力が発生しないこと、つまり相対効が原則であり、例外的に他の債務者や連帯保証人にも効力が及びます(絶対効)。
例外が数が少ないので、絶対効をきちんと記憶し、それ以外は相対効であると覚えてしまえば、連帯債務についてはほぼ学習を終えたと言えます。
民法では、特に条文の中にある「ただし~」という但し書きを意識することが重要です。
具体例(判例)を意識して学習する
権利関係の条文については、抽象的に書かれていることがほとんどです。
ですので、初学者の方は条文を一読しても、どのような場面を想定して、それに対してどのような解決法を民法は提示しているのか、ということを理解することは難しいと言えます。
そこで、
です。
また、最近、権利関係では、判例からの出題が6割を超えています。
判例は当然のことながら実際の紛争を解決した手法や論理構成ですので、判例をきちんと押さえることは、民法の学習をより具体的に落とし込むことが可能です。
理解にもつながりますし、得点を稼ぐこともできますので、是非とも判例をおさえながら学習することをおすすめします。
【危険】権利関係を勉強する際にしてはいけない取り組み方は?
では、反対に、権利関係を勉強する際に、やってはいけない取り組み方についても解説させていただきます。
正確な暗記をしていない
まず、第一に
です。
暗記が苦手と思っている人こそ、注意していただきたいのですが、宅建の本試験はほぼ、知識問題ばかりです。正確な知識を有しているかを問われます。知っていれば、簡単に解けますし、知らなければいくら考えても解くことはできません。
想像してみてください。
ご自身が不動産取引をする際に出会った宅建士が、質問をしてもわからない、正確なことを言えない…そんな宅建士を信頼することができますか?
宅建試験では宅建士としての最低限の知識を求められます。今後のためにも是非とも正確な知識を習得してください。
深入りしすぎてしまう
次に、権利関係分野、特に民法については条文数も多く、こだわりだしたら、きりがありません。そして、深入りしすぎて、どんどんのめりこんでしまいがちです。
皆様、注意していただきたいのですが、皆様は法律の研究家を目指しているのではなく、あくまで、宅建試験の合格を目指しているはずです。
そして、権利関係は50問中の14問出題され、そのうちの5割で合格している受験生も多くいるのです。
資格試験の勉強は時間との勝負です。効率的な学習するためには捨てることも必要です。その分を、宅建業法や、法令上の制限などに回した方がより多くの得点をとることが可能です。
また、先ほど正確な知識を暗記することが必須であると言いましたが、暗記の方法も効率的にしていただく必要があります。
テキストを丁寧にノートにまとめるようなことはしてはいけません。ノート作りに時間を割いてしまうのは、女性の受験者によく見受けられます。
ノートを作成しても覚えるのは非効率的です。
筆者がおすすめするのは、とにかく過去問の反復です。反射的にどの肢のどの部分が誤っているかを判断できるようになれば、おのずと正確な知識を習得していることになるからです。
まとめ
以上、今回は宅建本試験でも重要な分野である、権利関係分野の学習の方法について述べさせていただきました。
権利関係分野といっても、7問得点したらいいのです。10問解ければ安心でしょう。試験対策の受験勉強期間にしても、本試験の受験中にしても、受験は時間との勝負です。
効率的に正確な知識を習得するということと、捨てる勇気をもって学習していただきたいと思います。