宅建試験において民法の代理については、例年かなりの頻度で出題されています。
など代理だけでも数多くの論点があります。
その中でも、今回は『双方代理』について解説させていただきたいと思います。
代理はきちんと押さえておけばそれほど難しくないので、正確な知識を習得して、是非とも得点源にしていただきたいと思います。
双方代理って何?宅建に出題されるか徹底検証!
まずは、双方代理の意義について簡単に説明させていただきます。
双方代理とは
双方代理とは代理人が、契約当事者双方の代理人になることで、民法の定める代理のうち特殊な類型であり、自己契約とともに原則として禁止されています。
例えば、売主と買主の両方の代理人となることです。
これは、どちらか一方の本人の利益が害されるおそれがあるので、原則として禁止されています。
出題頻度は?
それでは、双方代理の出題頻度はどれくらいなのでしょうか。
民法の中でも代理は比較的出題傾向が高く10年単位では7回前後出題されています。
その中で、問題の選択肢の一つとして、双方代理や自己契約についての問題が5回ほど出題されています。
民法の出題数は概ね12問ほどで、例年、総則から2問出題され、そのうちの1問は代理から出題されると考えていいでしょう。
配点はどれくらいある?
配点については、1問代理から出ると考えて1点です。代理という分野から1点と考えると、双方代理については、そこまで重点的に抑えておく必要はないかとも思えます。
しかし、近年、単純な正誤問題だけでなく、正しい肢の数や間違った肢の数を問う、個数問題の頻度が上がってきていることを考えれば、正確な知識を習得しておく必要があります。
難易度は?
正しい知識を習得してさえいれば、正しい肢か間違った肢なのか瞬時に判断することが可能です。
【宅建】双方代理の押さえるべき分野は?勉強する際のポイントも紹介
次に、宅建本試験対策として双方代理の抑えるべき点について、自己契約とともに述べさせていただきます。
双方代理の押さえるべき分野
双方代理の定義については上述させていただきました。
ここで、同じく原則禁止とされます、自己契約の定義をきちんと押さえておいてください。
双方代理と自己契約はセットで覚えておくことが有効です。
双方代理の定義
双方代理は、簡単に言うと、
です。
これは原則禁止です。
売主買主双方代理人となったら、なぜ売主、あるいは買主の不利益になるのでしょう。
当事者である売主と買主の心理面から考えてみましょう。
それをそれぞれ一人の代理人に頼んだとします。最終的に売買代金は3000万円と決定したとします。
でも、これだと、売主としては、本当に自分のために買主と交渉して3000万円となったのか、本当はもっと高く売れたのではかと思ってしまいます。
買主も買主で、本当はもっと安く買えたのではないか、と思います。
思うだけではなく、実際にそのような不利益が生ずることが多いので禁止されているのです。
他方、自己契約とは、例えば、ある不動産を売却する際に売主の代理人となった人が、「それだったら、私が自ら買いますよ」と買主になってしまうことです。こちらも原則として禁止されています。
あくまで、
と覚えておいてください。
自己契約の定義も押さえて、混同しないように、しっかりと区別して知識を整理しておくようにしましょう。
双方代理が有効になる場合
「原則、禁止」とされていますが、「原則」があれば「例外」もあることを覚えておいてください。
例外的に有効とされるのは、二つの場合です。
①本人(売主と買主の両方)があらかじめ了承した場合
双方代理が許されます。不利益を受けるおそれのある本人が許諾しているのですから、禁止する理由がなくなるからです。
②単なる債務の履行
たとえば、すでに売買契約が締結されており、その履行として所有権移転登記をする場合などです。
行為の内容からして、本人に不利益が生じるおそれがないからです。
勉強する際のポイント
それでは、双方代理を実際に勉強する際のポイントについて、述べさせていただきます。
代理の全体像をまずはしっかりと頭に入れておく!
まず、第一は
です。
どのような場合に代理として効果が発生するのか。その要件をきちんと押さえておくことが必要となります。
原則をきちんと押さえておくこと、ということですね。
代理として効果が発生するということは、つまり、代理人がした行為が本人に権利・義務として発生するということです。
この、原則、
という点を理解してからこそ、例外である双方代理や自己契約、無権代理、表見代理などの理解が進みます。
そして、なぜ有効にならないのか。双方代理の場合は、上述した簡単な例で言いますと、値段の交渉を本当にしてくれたのか、売主買主は不利益を被るおそれがあるからです。
このように、有効にならないのは誰かの不利益になるからであり、その理由(制度趣旨と言います)を押さえておけば、単純な知識ではなく、生きた知識としてご自身の中で宅建試験はもちろん実社会でも生かすことができます。
そして、最後に例外の例外。
つまり、例外的に無効になる双方代理が、さらに例外的に有効となる場合を押さえておきましょう。
これは、売主買主とも了承している、あるいは、手続き(履行)を行うだけの段階になったなど、売主買主に不利益が発生しない場合です。
このように順序立てて覚えておくことが代理だけではなく、民法全体の学習方法として最適です。
まとめ
今回は民法のうち双方代理について述べさせていただきました。
代理は例年1問出題される傾向がありますので、きちんと押さえておくべき論点です。
学習する際には、
というように順序立てて、そして、制度趣旨(だれのどういった利益を守ろうとしているのか)、をおさえておくことが早期の理解につながります。
是非とも代理の分野が出題されたら喜べるほどの得意分野にしていただきたいと思います。